―技術の進歩に伴う倫理的責任をどう果たすか―
生殖医療の技術革新は目覚ましく、体外受精(IVF)、着床前診断(PGT)、第三者提供、代理出産など、多様な選択肢が広がっています。しかしその一方で、「選べる自由」と「倫理的責任」のバランスが問われる時代でもあります。とくに着床前診断に関しては、「重篤な遺伝病を防ぐ支援」か、それとも「より良い子どもを選ぶこと」か、その線引きは非常に微妙で複雑です。日本では現在、国際的な指針や倫理審査委員会(IRB)のもとで慎重に運用されていますが、技術の進化はその境界線を曖昧にしている現状があります。
また、卵子や精子の第三者提供、および代理母制度については、日本国内での法整備がまだ途上にあります。そのため、子の出自を知る権利を含めた心理的・社会的配慮の議論が十分とは言えません。海外では、子どもの最善の利益を中心に据えた制度設計や支援体制が進む国もあります。こうした事例から学びつつ、日本においても医療や研究の現場において、倫理的な選択を支える構造づくりを推進する必要があると考えます。
当協会としては、「患者に選択の自由を提供するだけでなく、その選択が倫理的にふさわしいかどうかを支援する」ことをミッションと捉えています。専門家による倫理カウンセリングの導入や、医療・研究の現場における標準化された倫理的ガイドラインづくりを通じて、「選ぶ権利」と「尊厳を守る責任」の両立を図っていく所存です。